Session2: ビジネスイベンツの未来に向けた対話 – ラウンドテーブル

ラウンドテーブルと題したセッション2では、3つのテーマに分かれてディスカッションを行った。

1)主催者ニーズに応えるソリューションとは?

山谷 泰賀 氏 / Dr. Taiga Yamaya
 量子科学技術研究開発機構
 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部、  
 次長 
皆川 幸代 氏 / Ms. Sachiyo Minakawa
 株式会社メディプロデュース
 プロジェクトマネージャー
[Host] 田中 弘一 氏 / Mr. Hirokazu Tanaka
 JCMA代表理事補佐

 

コロナ禍で急速に進歩した、オンライン・イベントの技術、ハイブリッド開催の経験、メタバースなどの新たな展望も広がるが、主催者のニーズと、サプライヤーのサービスは本当に合致しているのか?この2年半あまりの会議開催経験を共有し合い、会議フォーマットやテクノロジーの側面も含め、よりインクルーシブなイベントを実現するための“最適解”を模索したこのチーム。

ホストのJCMA代表理事補佐 田中 弘一 氏 からコロナ禍の会議開催状況の概況報告があった後、当日、急遽、オンラインでの参加になった量子医科学研究所、山谷 泰賀 氏から、コロナ禍のご自身が関係する学会の会さ状況とご自身の参加状況について、現地での様子と共にご紹介いただいた。

環境負荷が軽減されることを含めたオンラインの利点もありつつ、リアルとオンラインの良さは、どう融合できるのか、果たしてハイブリッドは定着するのか、という指摘もあった。やや内向きな日本人研究者の心が、オンライン化によってさらに内向きにならないかとの懸念も述べておられた。

続いて、株式会社メディプロデュース 皆川 幸代 氏は、国内学会の主催者の声、ハイブリッド化やメタバース導入についてのヒアリング結果や、医師を対象にした意識調査の結果について紹介しつつ、「学会はリアルであるべき」と考える主催者に対して、参加者は圧倒的にハイブリッドを望んでいるという大きな意識の開きがあり、そのギャップを埋めるソリューションを提供するのがPCOの役目ではないか、と主張。

また、ご自身が運営に関与した会議における開催形式と目的のマトリックスなど、示唆に富む情報提供があった。ソリューションの提供には、とにかく会議の目的、主催者の好みに至るまで、リサーチを重ねること、そして常にアンテナをはっておくことが重要と締めくくっておられた。

その後のラウンドテーブルでは、「とはいえ、あらたなMICEテックの可能性は」「リアルとオンラインをいかに融合させるか(できるか)」「結局リアル回帰?では体験価値はどう変わるか」を考えるヒントとして、グループごとにディスカッションを行った。各テーブルからの発表では、リアルかオンラインかは、もはや世代間ギャップの問題ではないか…といった指摘もあった。

  2) ビジネスイベンツのゼロエミッションに向けて

桃井 謙祐 氏 / Mr. Kensuke Momoi
 国土交通省観光庁参事官(MICE 担当)
 信州大学社会基盤研究所特任教授
稲垣 恵 氏 / Ms. Megumi Inagaki
 札幌コンベンションビューロー誘致戦略課長
松井 純子 氏 / Ms. Junko Matsui
 株式会社コングレ、営業企画部プロジェクトリーダー
[Host] 西本 恵子 氏 / Dr. Keiko Nishimoto
 (一社)MICE総研、上席研究員

待ちに待った対面のイベントの再開、しかし同時に私たちは、人が集まることによる環境負荷についても忘れることはできない。F2Fのイベントを盛り上げつつも、いかに環境負荷を軽減できるのか、会議をよりサステナブルに開催するためにすべきことは何なのか、先進事例やアイデアを共有し合うことを目的としたこのセッション。

まず、ホストの西本恵子氏から、MICEとサステナビリティに関するこの10年くらいの振り返りがあった。2010年ころより、欧米で徐々にサステナブルという言葉が聞かれるよう担ってきたが、その重要性を重い知った出来事が、2011年の東日本大震災であった。津波と原発の事故による風評被害にさらされたなかで国際会議を開催することになったとき、「東北の復興を助ける」ということが、国際会議の誘致における訴求ポイントにもなり得た。当時も、「ビルトバックベター」が叫ばれたが、大きな災害の後に価値観のアップデートがされる傾向にあるようで、今またコロナ禍を経て、SDGsが注目されている状況がある、とのこと。

 つづく桃井参事官はプレゼンの中で、各都市がなぜサステナビリティに取り組むのか、サスネビリティに取り組むためにどうステークホルダーを巻き込んでいくのか、それが都市の戦略としてどう位置づけられているかどうかとか、といった課題があることを指摘。さらには、都市によっては、すでにかなり進んだ取り組みをしているところもあるが、その取り組みが、MICEの文脈の中で国際会議の意思決定者に評価されるようなあり方で示されているのか、定量的な目標を示すことも必要であることを強調されていた。特にGDS indexにおいても韓国などのアジアの他都市が上位につけているのに対して、日本の都市の存在感がないことも指摘しておられた。

札幌は日本で唯一GDS-indexに加盟している都市となるが、札幌コンベンションビューローの稲垣氏は、なぜ札幌がサステナビリティを推進するのかという背景とともに、国際観光・MICEに向けた具体的な取り組みについてご説明いただいた。また、MICE参加者の移動や宿泊で生じる二酸化炭素を地域の森で吸収する循環型社会モデル実現のために独自のカーボンオフセットプログラムを実施していることもご紹介いただいた。

その後のディスカッションでは、「誘致に勝つためのサステナビリティとは」「地域ステークホルダーの巻き込み方」「地域で取り組むのか、オールジャパンで取り組むのか」といったテーマを設け、各テーブルで事例紹介などを交えたディスカッションが行われた。

最後にGDS-Indexの代理店となっている株式会社コングレの松井氏から、GDS-Indexの紹介と加盟方法についてのご案内があった。

 

 2)ビジネスイベンツの地域へのインパクト

ワイキン・ウォン 氏 / Ms. Waikin Wong
 国際会議協会 [ICCA] アジア・パシフィック事務局長
 Regional Director, ICCA Asia Pacific
[Host] 村山 公美 / Ms. Hiromi Murayama
 パシフィコ横浜 誘致推進課
 
ビジネスイベンツが開催地にもたらすのは、旅行消費だけではない!会議によって開発されるナレッジエコノミーや、それがもたらす地域へのイノベーション効果など、ビジネスイベンツが、地域コミュニティに与えうる本質的なインパクトについて理解し、地域コミュニティとビジネスイベンツとの未来的な関係について考えるこのセッション。イントロダクションで発表いただいたアシュウィン氏へのQ&Aから始まり、ワイキン氏には、アジア・パシフィック地域における具体的な各地の取り組みなどをご紹介いただいた。

その中には、地域のライフスタイルを変革し、低炭素で持続可能な環境配慮型の都市の達成を目指したEco Mobility World Festival 2017(高雄)やビジネスイベントは経済戦略に貢献し、都市をグローバルにリードする人材や資本を引き寄せるのだとして、ビジネスイベントによって景気回復を促進することをうたったBE Sydneyの例、メディカルハブとして、医学分野の国際会議を積極的に誘致するシンガポールの例なども挙がった。

忘れてはならないのは、会議産業は社会的・経済的発展の触媒であり、業界内の持続的な成長を実現するには、その両面における協力的な努力が必要であること。ICCAも国際的な会議業界の他団体と横断的な協力を行っているほか、ICCA Congressでのウクライナ情勢への意識喚起、また2016年Congressがサラワクに残したレガシーについても紹介があった。